消費税編
 
消費税計算で仕入税額控除が認められない?

 食品小売業A商会を営むAさんは、平成17年度の売上げは非常に好調でしたが、その忙しさのあまり何一つ帳簿(売上帳、仕入帳や現金出納帳)をつけていませんでした。ただ、売上高はレジの記録で確認できるし、仕入高や経費も領収書と通帳の振込履歴から把握できるため「確定申告の計算に必要な数字は何とか掴めるし、帳簿がなくてもまあいいであろう」と高をくくっていました。

レジと領収書等から集計した金額は以下の通りでした。

売上高
 6,300万円
(内消費税300万円
仕入高
5,250万円
(内消費税250万円)
経費
420万円
(内消費税20万円)
 Aさんの申告では、300万円▲(250万円+20万円)=30万円

これを基に、Aさんは所得税を約60万・消費税を約30万円で確定申告しすぐに納税しました。ところが、その数年後の税務署調査時に、Aさんは青ざめる事になってしまいました。

調査官は「A商会さんは帳簿の作成が出来ていませんね、残念ながら消費税の仕入税額控除額270万円は認められないことになります。したがって、消費税は申告の30万円ではなく合計300万円になり、消費税額270万円が納付不足となります。」と同情ぎみに言いました。頭が混乱するAさんは気持ちを落着かせながら「仕入れや経費で実際にお金は出てしまっているのだから、そんな金はどこにも残っていないことくらい分かるだろう。ない袖を振れというのかね、本当は何とかなるんだろ」と迫りました。しかし、調査官からは「でも消費税法に規定されていますからね、どうにもならないんですよ」とつれない回答が返ってきました。
 Aさんは渋々残りの270万円等を金融機関からの借入金で納税することとなりました。では、なぜこのような事になったのでしょうか?

 ポイント 消費税の計算上、領収書と帳簿の両方の保存が必要である。

  消費税法は帳簿及び領収書(請求書等)両方の保存が義務付けています。どちらかの保存がない場合、原則、仕入税額控除は認められないと考えられます。

 消費税の計算方法(原則)は次のような計算方法です。
   売上げに含まれる消費税 △仕入れや経費に含まれる消費税 =納付消費税
   (上の例では300万円) (△上の例では270万円)     =(30万円)

ところが、この270万円控除の要件である帳簿の保存が出来ていないため、Aさんの納付する消費税は30万円ではなく270万円増加した300万円になってしまったのです。

  ポイント売上高5000万円超の事業主は簡易課税が適用できなくなりました。

簡易課税制度の場合、売上高が把握できれば消費税計算が可能であり、仕入税額控除も領収書と帳簿両方の保存を適用要件としていません(保存用件がありません)。簡易課税の適用を受けられる売上高は少しずつ引き下げられました。

    消費税が導入された当時は
億円以下
    平成3年改正で4億円以下
    平成6年改正で
億以下
    平成16年4月1日以降から始まる事業年度から
5000万円以下。

 
Aさんの営むA商会は平成17年度から簡易課税の適用が受けられず原則計算しか出来なかったのです。Aさんは、以前は消費税を簡易課税計算で申告していたため、あまり帳簿作成が重要であるとの認識が低かったのです。これも今回の消費税申告に災いしてしまいました。

消費税法30条7、8、9項。 消費税法37条1項参照


 
給与を外注費にして、節税しました!?

 運送業であるG運送を営むG社長は、ここ数年経営不振に悩まされ続けていました。

「請負単価は下がる一方、ディーゼル車両の排ガス対策用改造費も高額だ。挙句の果てに、軽油代は上昇したまま高止まり、その上この消費税、なぜ赤字なのにこんなに払わにゃならんのだ!」と、ついついぼやきたくもなります。

突然、前期の決算時に税理士と話した内容を思い出し、あることが閃きました。「確か、うちの税理士の話では、『給料は消費税の仕入税額控除対象になりません、でもドライバ−が病欠した時に緊急で外部に委託した外注運送費は仕入税額控除になります』、との説明だったなぁ。それなら、ドライバ−全員の雇用契約を解除して、あらたに外注契約を結べばいいんじゃないか、これなら簡単に給与を外注費に振替えられるぞ。その分、ドライバ−への支払を少し増すこともできそうだし」。

 早速、経理部長と会社に残っている従業員運転手を集合させ、その趣旨を述べたところ、最終的に約半数の運転手が外注契約に応じました。したがって、当月の給与総額は前月に比べて半減し、替わってその減少分が外注費として計上されることとなったのです。

外注費へ振りかえられた金額は約500万円/1ヶ月で、仮払消費税額は約24万円です。「これで年間290万円ほどの消費税が節約できそうじゃないか」、社長はいたくご機嫌です。

実のところ、G運送の勤務実態として、従業員運転手と外注契約運転手に何ら違いはありませんでした。

 その一月後、顧問税理士は驚きました、と言うのも、できあがってきた試算表を確認したところ、給与総額が前月の約半分に激減し、変わって前月までほとんど発生していなかった外注費が、一気に増加していたのです。急いで経理部長に問い合わせしたところ、先の事実が判明しました。

 G運送に駆けつけた税理士は「だめですよ、そんなことしても」、苦笑いしながら続けました。「名目はともかく、給与や賃金の性質を有するものは、仕入税額控除の対象になりませんよ。」と説明しました。

 どういうことか説明しますと、消費税法は、所得税規定の給与所得を課税仕入としていません。たとえ形式的に外注費の体裁を整えたとしても、やはりそれは給与所得ですから、消費税の仕入税額控除は認められません。

 それでは、給与所得に該当するかどうかの判断基準は、次のとおりです。
  @雇用契約等において従属的に労務を提供すること
  A労務提供の対価として給付を受けることとされています。

 G運送の場合、外注委託運転手と従業員運転手の勤務実態になんら違いはなく、両者とも上記の@Aを満たしています。もちろん外注費ではなく、給与として処理すべき支出です。

 そこに現れたG社長「せっかくいいアイデアだと思ったのになぁ、残念・残念。でもいつも『あれもだめ!これもだめ!』だねえ先生は、一度『参った』と言わせたいもんだよ」。

ニコニコしながら、その税理士は、「いつも社長のアイデアには驚かされます。でも、実行する前に少し相談してください。私も節税できそうな事案があれば、すぐに社長に提案しますから」。

         消費税法2条1項12条 所得税法28条1項 

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