所得税編
 
離婚時の財産分与には税金が全くかからない?

 間もなく定年を迎えるBさんは、長年連れ添った妻から性格の不一致を理由に離婚を求められ、やむなく同意しました。妻への財産分与として、35年前に購入した家と土地を渡すこととなりました。落ちこむBさんは、離婚経験者である友人から「財産分与には税金がかからないよ、離婚先輩の俺が言うことだから間違いないさ」と聞いていたので、詳しく調べる気力も萎えてしまっていて、確定申告時には特に何も行ないませんでした。

ところが、半年後、税務署からのお尋ね書が届いて税務署に出向いたところ、思いがけない事実が判明します。

 財産分与の事情を説明した後、税務署の担当者から「財産分与を受けたあなたの元奥さんは、その友人が言われるように贈与税はかかりません。でもBさん、あなたには譲渡所得が生じているため500万円の所得税の納付が必要です。」と告げられました。
 驚いたBさんは、その理由を尋ねたところ「Bさん、あなたが
35年前に500万円で購入した家と土地は、財産分与時の時価で6000万円と評価されます。財産はあなたの手を離れ移転していますので、この差額5500万円には譲渡所得が生じています。居住用不動産譲渡の特別控除3000万を受けたとしても、2500万円に対し所得税がかかり、500万円の納税が生じるのですよ。」という説明をうけました。

あまりにも腑に落ちないBさんは、しつこく食い下がります。「でも私は、元の妻に財産を分与しただけで、一銭たりとも手にしていません。財産を失った私がなぜ税金を払わなければならないのでしょうか。」。

担当者は「お気持ちは分かります。でもね、あなたは6000万円相当の固定資産を元奥様に財産分与されたのです。そして、その購入価格は500万円ですから、あなたの財産は離婚当時5500万円の増加益が生じていた計算になります。」。「所得税は、この差額を清算するため20%の税率を課すると決まっています。最高裁判所の判決でも、この実務処理を認められています。確定申告を行って500万円を納税していただかなければなりません。」、と答えました。
Bさんは、定年後には趣味であるゴルフを堪能するため、以前から会員権の購入用にと貯めて
いた
500万円を取り崩し、泣く泣くその納税に当てることにしました。


Bさんのケース 取得価格500万円 時価6000万円 差額5500万円のプラス

Bさんのケース 不動産の時価
6,000万円 差額
5,500万円
取得価格
500万円
                    財産分与者に、この差額(↑)を課税する規定となっている。



友人のケース 取得価格3000万円 時価2500万円 差額△500万円のマイナス
友人のケース 取得価格
不動産の時価 3,000万円
2,500万円 差額
500万円
                      友人は差額がマイナス(↑)であったため課税されなかった。

 
注意)実務上、離婚に伴う財産分与であっても、その財産が相当でないと判断される場合には、贈与税の対象として取り扱われる可能性があります。又、財産分与は錯誤であるとして、元妻に対して財産分与無効の請求を起こし、裁判所からその請求が認められた例があります。

 
息子の保証債務を履行するため資産売却、なぜ譲渡所得税が?
  (保証債務履行のための譲渡について所得が課税されない特例)不適用の例

定年後、悠々自適の人生を楽しんでいたEさんは、設立間もないベンチャ−企業を経営する息子に泣きつかれ、絶対に迷惑をかけない事を条件に1億円の連帯保証人になることを承諾しました。ところが出張先で交通事故に巻き込まれたEさんの息子は、その数日後父親の願いもむなしく息を引き取ります。息子が技術と営業の責任者を兼ねていたため、指揮官を失ったそのベンチャ−企業はあっけなく倒産してしまいました。

 時をおかずして、
さんのもとに債権者たちが押し寄せます。返済を迫られたEさんは、この企業の資産処分を検討しましたが、処分価額はいくらにもならず“焼石に水”の状態でした。やむなく、長年住み慣れた家と土地を売却することで何とか1億円を捻出し、保証債務の履行に当てたことで、この窮地を乗り切ったかに見えました。

 悪夢のような一年が終わり、年も明けた3月、Eさんは倒産したベンチャ−企業の元顧問税理士に確定申告を依頼しました。「保証債務を履行するために資産を売却した場合には、その所得を無かったものとみなす特例があります。さんの場合はこの特例に該当するので、本来ならば約2500万円掛かる税金が不要になりますよ」、と聞かされていたからです。

ところが現実は異なりました、Eさんにはこの特例が適用されなかったのです。

 Eさんは息子の相続にあたり、相続放棄を行っておらず単純承認したことになります。つまり、息子から相続した負の財産である債務は、Eさん自身の負債になってしまったのです。Eさん自身の負債の返済に充てるために資産を売却したとしても、Eさんは支払い能力を有するため、この特例は適用されません。慌てて、弁護士に相談に行きましたが、このような場合、裁判所も特例の適用を認めておらず、訴訟を起こしても要求が通る可能性は低いとの回答です。

 Eさんは息子の相続開始から3ヶ月以内に、相続放棄手続きを家庭裁判所にしておいたならば、この課税を回避できたでしょう。
 昨年の暮れに、残ったお金で購入した小さな中古マンション、ここにも長く住めそうにないことを、
Eさんはなかなか妻に告げられずにいます。

           所得税法642項参照



ゴルフ会員権の譲渡損はどうなる?


 
近頃「ゴルフ会員権の購入を検討しているんですけれど」という雑談を、ちらほら聞くようになりましたが、一時はバブル崩壊の象徴的な資産として悪玉視されていたのが、ゴルフ会員権ではないでしょうか。
 
 
それもそのはず、一人で四つも五つもの会員権を購入されていた方がおられたり、悲惨?なケースですと、ゴルフのプレーをしない人が複数のゴルフ会員権を購入されていた、なんてケースも結構あったりしました。

 では、バブル真っ只中やその前後に不要なゴルフ会員権を購入さていた場合、少しでも時価急落の損失を穴埋めできる手段のひとつとして、ゴルフ会員権の売却が有効ではないでしょうか。
 昨今景気の回復が紙面をにぎわすようになり(一部の方に限られているような気もしますが)、ゴルフ会員権の売買が、少し盛んになってきたような噂も耳にします。塩づけ状態が続いていた頃と比べ、ずいぶん売却し易くなったのではないかと思います。

それでは、高値で購入したゴルフ会員権をそれよりも安い金額で売却した場合、その売却損失はどのように取扱うのか説明しましょう。


 
購入価格 売却価格 差額の譲渡損失
2000万円  } 1800万円
200万円


  ゴルフ会員権
 購入価格2000万円
 売却価格 200万円
 譲渡損失1800万円



 ゴルフ会員権を譲渡した場合、一般的な所得ともいえる給与所得や事業所得と損益通算できます。
 少し専門的にいいますと、所得区分は総合課税の譲渡所得になるたるため、上記した給与所得や事業所得と損益通算することになります。
給与所得が仮に1800万円ある人は、譲渡損失相当額を控除するため、所得はゼロになります。ということは、確定申告を行なうことで、払いすぎとなった源泉所得税が還付されることになります。1800万円の給与に対する源泉所得税ですので、金額はそこそこの額になるのではないでしょうか。

 ゴルフ会員権の取扱いに反し、自動車(通勤に供している自動車など)を売却した場合に損失が発生したとしても、損益通算することはできません(最高裁判決)。一般の納税者にとって、感情的にも理論的にも、なかなか理解しがたい税金上の取扱いのように思われます。

 将来的には、自動車の損益通算ができる方向ではなく、ゴルフ会員権の損益通算ができなくなる方向で、税金の取扱いが変更される可能性が高くなっているとのこと。


ゴルフ会員権の譲渡を検討されるならば、すこし急がれたほうが良いかもわかりませんね。

 

 そのほか、ゴルフ場関連の事例として、ゴルフ会員権の名義変更手数料の取扱いは、平成17年の判決を受けて、大幅な変更がありました。又、ゴルフ場が倒産した場合の取扱いはやや複雑です。
 処分・譲渡される場合は、税理士に相談されることをお勧めします。


 
所得税基本通達33−6の2、3参照

不動産を売却した翌年の確定申告は



 
この時期、住宅を売却した方からよく相談を受けます、もちろん所得税が課税されるかどうかです。
 その場合、私は次のことをお尋ねしています。
 
 
居住用の不動産か、あるいは別宅として利用しているか?
 取得方法は、購入か相続か
 
その取得から何年経過しているか
 
取得時の契約書はあるか


  これだけの内容が確認できれば、おおよそ所得税が課税されるかどうか、
  簡易的に判断することが出来ます。

  「所得税が課税されないだろう」、と早合点されている方の多くは、家屋の減価償却を忘れられています。
購入金額3000万円 減価償却 1600万円
税金計算時に控除
する金額1400万円
 

 簡単に言うと、
 購入金額が3000万円

   
 売却時、控除できる金額は
 1400万円です。
    ↓

 売価2000万円とすると
 譲渡益は2000−1400=600万円(課税の対象)

 ただし、居住用住宅を売却されたのであれば、その譲渡益から3000万円まで控除されます。
 多少利益が発生しても少しは安心してください。
 
 要注意は、主に居住用として使用していない資産の売却や別宅(転勤後不要になり長期間放置していた)、
 あるいは、別荘の売却です。これらには上記3000万円の控除がありません。

 税務署から問合せがあって、申告が必要であったならば、期限後申告する必要があります。
 この場合、通常分の課税に加えて無申告加算税や延滞税が別途課税されますので、ご注意ください。